ニッチな店の生きる道

以前地域新聞で素敵屋の記事を載せていただけることになり、交換条件で懸賞として「Penny Rose」のステッキを1本プレゼントした。

個人情報保護法の関係で、懸賞に応募くださった方々の詳細はいただけなかったが、当選した方からお礼の電話を頂いた。
そんなこともすっかり忘れていた数日前、一通の葉書が届いた。

「前略、ごめん下さいませ。私は4月の○○紙にて幸運にも当選しまして、現在『ステキな杖』を使わせていただいている者です。とてもかわいい、おしゃれな杖です。私の物よりずっとステキなので、当ると嬉しいなぁ!と思っていました。早速、○○医療センターの先生にも見ていただきました。皆の視線を感じます。大切にいたします。」

お礼のお電話を頂いたときも嬉しかったが、わざわざお手紙まで頂けたことは感動だった。
「かわいい、おしゃれな」ステッキを持つことでこんなにも喜んで頂けるとは、ステッキ屋を始めるまで考えもしなかった。
仕事を続ける理由づけなど必要ではないだろうが、どうせ労力を使うなら人に喜んでいただける仕事って良いなぁ~と日々思いが強くなってきた。

色々なお客様のお話を伺ううちに、「たかがステッキ、されどステッキ」1本のステッキで気持ちが随分と変わって頂けることに気付いた。
加齢による足腰の弱りから、先天性の疾病のため、事故の後遺症から・・・
理由は様々だが、「ステッキ」を使用することに一様に心が傷ついていらっしゃる。
だから「ステッキ」の立場が「道具」であってはいけないのだと強く感じるこの頃だ。

英国紳士が燕尾服にシルクハット。片手にステッキのようなファッションのアイテム的扱いが浸透すれば、杖=老人の持ち物ではなくなっていくのでは・・・
少しずつではあるが、ステッキへの抵抗感は薄らいでいるのを感じる。
それでも、提供側のマーケティングが老人がターゲットの、男性の観点からの商品構成であることは間違いない。

ニッチな店舗である私だからこそできることは・・・
お客様のニーズを吸い上げて、利用者が何を求めているかに耳を傾けること。
ニッチはニッチなり、大量生産品との差別化が求められるのであろう。。。

タイトルとURLをコピーしました