私がステッキ屋を始めようと考えたとき、何処かから商品を仕入れて小売したところで、既に流通している市場で太刀打ちできるはずは無いと思った。
第一に、仕入先が分からなかった。
ステッキと言えば紳士淑女の国イギリスを真っ先に思い浮かべたが、ステッキって英語で何て言うの?の世界だった。
その頃あまりインターネットを必要としていなかったので、回線もISDN。
画像呼び込みが昔のワープロの印刷並みに遅い。
来る日も来る日も、ステッキのサイトを求めネットサーフィン?
いやサーフィンなどと呼べる代物ではない、人力車並みのパワーでしかなかったのだから。
そしてたどり着いたStyle-Stickのページ。
ど肝を抜かれた。
カラフルで遊び心があって。
杖=介護用品の常識がブッ飛んだ瞬間だった。
その後Penny Roseを見つけたときは、小躍りしたものだ。
何度かの交渉の末、取り扱いさせて頂けることなり、素敵屋は開業した。
日を追うごとに、素敵屋の存在が広まり、やっと認知されてきたと思えるようになった矢先。
Penny Roseの入手が不可能になってしまった。
原因は…金型を壊してしまい、新たに作ることができないとのこと。
パイプ部分はどうにか既製品を用意できる。
問題は…グリップ(握り)部分。
無いものは…作るしかない!
と現在金型を作成し、樹脂加工の真っ最中。
既存のコインホールを残したものの…オリジナリティを持たせるために思案中。
次なる問題は…杖先(ゴム)
日本のゴムメーカーを当たるも、黒い杖先しかない。
クリアーなステッキに黒のゴム先ではイメージが違う。
折りたたみステッキなどを輸入しているClassic Caneのリプレースメントゴム先にグレーの物を見つけ、只今到着を待つのみ。
ストラップも、グリップの穴を塞いでしまったので、グリップとパイプの結合部に巻きつける金属にストラップ用の引っ掛けを付けていただくことになった。
その為の金具が必要となった。
一つの製品を形にするには、こんなにもパーツのかき集め作業が伴うとは…
楽しくもあり、辛くもある。
ともあれ、生みの苦しみと言う事だろうか。
出産はもう間近に迫っている。